私たちの生命の誕生については、地球外起源説、原始大気起源説、原始海洋起源説などいくつかの説がありますが、いずれにしても生命の源はアミノ酸だと言われています。
遠い宇宙の果てから落ちてきた隕石の中にもアミノ酸が見つかることがあります。
1969年、オーストラリアのマーチソンに落下した隕石には微量のグリシン、アラニン、グルタミン酸、ベーターアラニンが確認され、地球以外の宇宙にも生命体が存在した痕跡と考えられています。
また、5億年前の三葉虫の化石からはアラニンなどのアミノ酸が検出されるなど、現在でも化石や隕石のアミノ酸から生命起源の謎を解く研究が続けられています。
アミノ酸は私たちの生命そのものを生み出す、重要な物質なのです。
人間のカラダは約20%、水分を除いた固形分の約50%がタンパク質でできています。
私達ヒトのカラダの中には、約10万種類のタンパク質があると言われています。
肌や毛髪、筋肉や骨・内臓、それ以外にも、カラダの中では赤血球や白血球、ホルモン、等々…。体の中のほとんどのものは、タンパク質抜きではできないのです。
このタンパク質は、アミノ酸がつながってできたものです。そして、これら約10万種ものタンパク質は、たった20種類のアミノ酸からできています。
私達が、いや地球上の全ての生物が生きていく上で、アミノ酸は無くてはならないものなのです。
アミノ酸はタンパク質の原料です。
ではそのタンパク質はカラダの中で何をしているのでしょうか?
タンパク質は「体をつくっている」だけではなく、体を動かす生命活動のほとんどを司っています。
栄養・血液になったり、各種の酵素、ホルモン、抗体となって身体を守ったり、様々な生体内反応に関わっているのです。
たった20種類のアミノ酸が10万種類のタンパク質となり、「いのちのもと」となっています。
必須アミノ酸(9種類) |
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体内で作ることができないため、 食べ物から摂取する 必要があるアミノ酸 |
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非必須アミノ酸(11種類) |
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体内で作ることができるアミノ酸 |
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味噌や醤油などの発酵食品は、大豆や麦などを麹菌によって発酵させたもので、含まれているたんぱく質は発酵の過程でアミノ酸に分解されています。こうした食品によって、私たち日本人は、古くからアミノ酸を食生活に取り入れておいしさを追求してきました。現在、アミノ酸製品に使われるアミノ酸も味噌や醤油と同じように、天然素材を原料にした発酵法を中心につくられています。
1985年に国際機関(FAO/WHO/UNU)が発表したタンパク質・必須アミノ酸の必要量は、主に窒素出納法で算出されていました。しかし、窒素出納法では必ずしも正確に測定できないことや、必要量が低く測定される傾向があるため、実際にはより多くの量のタンパク質・必須アミノ酸が必要という意見がありました。
タンパク質の必要量については、窒素出納法に代わる方法が確立されていないため、現在も窒素出納法で算出した値が参考にされています。しかし、アミノ酸については信頼性のより高い指標アミノ酸酸化法で算出された必要量が2007年に国際機関(FAO/WHO/UNU)から報告されています。その報告によると必須アミノ酸の必要量は、窒素出納法よりも多くなり、特に、バリン、ロイシン、イソロイシン、リジン、トレオニンについては従来の約2倍量となっています。
このようにタンパク質・必須アミノ酸の必要量は、今まで考えられていたよりも多くの量が必要になるという考え方も出てきていますので、私たちのタンパク質・アミノ酸摂取の仕方を見直すことも必要になるかもしれません。
摂取するタンパク質のアミノ酸のバランスを考えることは効率的な体作りに非常に重要です。これを分かりやすく表したものが「桶の理論」です。
食品中のタンパク質を構成する必須アミノ酸のバランスを桶に見立てたもので、桶の板を一つ一つの必須アミノ酸、板の高さを食品に含まれる各アミノ酸量(推奨摂取量に対する割合)、桶に溜められる水の量を体タンパク質合成に使われるアミノ酸の量に見立てています。
摂取するアミノ酸の種類や量のバランスが取れていれば、板の高さが揃い、溜まる水の量(合成される体タンパク質)は増えます。一方で一種類のアミノ酸でも不足していると、そのアミノ酸の板の高さまでしか水は溜まらず、体タンパク合成という点では他のアミノ酸は無駄になってしまいます。
そのため、効率的なカラダ作りには食品の桶の板の高さを揃える(不足しているアミノ酸を補充する)ことが重要です。